物納による上場株式損だし回避
相続税は、取得財産の相続税評価額を基に算出し、金銭で一括納付することを原則とする。
現金が十分に残されていない場合、財産を売却して所得税を納付し、その残額を相続税の納付資金とするケースも多い。
だが、株式相場が暴落し、相続時点から相続税申告期限までの10カ月の間、相続により取得した上場株式銘柄が下落しているとき、物納が非常に有効となるケースもあろう。
相続税の算出において、上場株式は相続直前の株価をもとに計算する。相続税の納付時点や申告期限時点の株価ではない。
いくら納付時点で上場株式が下落していようとも、下落前の高い株価をもとに算出された相続税を、金銭納付する必要があるのだ。
一方、物納においては、下落前の相続直前の株価を、相続税納付額として取り扱う。
わざわざ株式売却により損だしして金銭を得る必要もなく、株式そのものを納付すればよい。
物納の要件
物納を行うには、相続税物納申請書、金銭納付を困難とする理由書、の提出が必要だ。
理由書には、相続した現預金・換価容易な財産等、納税者固有の現預金・換価容易な財産等の記載が必要である。
また、納税者の生活費や事業経費など支出に関する記載も必要である。
さらには、通帳、源泉徴収票、確定申告書のコピーの提出も求められる。
なお、換価容易な財産には、上場株式は含まれない。
相続税には延納制度があり、延納もできないことを理由書において、算式において示さなければならない。
したがって、相続税の物納の適用を受けたいのであれば、
・遺産分割において、現預金・換価容易な財産を極力取得しない
・固有財産で、現預金・換価容易な財産があるのであれば、それ以外の資産へとポートフォリオを組み替える
など、相続開始後の思い切った対応も必要である。